musafirのブログ

雑記です。

「アラブの春」後のエジプト、その沸騰を描く。『クラッシュ』(2016年/エジプト)@東京国際映画祭

『クラッシュ』を観てきました

 

 

musafir.hateblo.jp

 

10月25日から始まった東京国際映画祭。先日チケット騒動の中で無事(ではなかったようにも思いますが、私の場合多重決済はされておらず、しかも結果的に予約できていたので)獲得した『クラッシュ』という映画を観て参りました。

 

2016.tiff-jp.net

 

ストーリー自体については多くは申せませんが、カンヌの「ある視点」部門にふさわしい映画でした。デモの騒乱と集団が暴走した時の狂気、そして何よりも(アラブ諸国、特にエジプトでは長年の課題である)軍、警察の非人道的な振る舞い。

 

アラブの春」がアラブ世界の中心地であるエジプトにも波及した後、結局何が残ったのか。あくまで結果論ながら、プラスの影響など何もなかったのではないか。安易に希望を抱かせるわけでもなく、しかしすべてが絶望でもなく、エジプト市民(作り手)が持つ複雑な思いを世界に伝える内容となっています。まあ「エジプト市民」などと一口に言えるほど単純ではありませんし、そうではないからこそ問題が深刻さを増す一方なのですが…。

 

ただ場面が護送車という限られた空間、しかし移動する空間で展開していくところに着想の素晴らしさを感じます。そういえばキアロスタミの追悼上映で公開されたBBC(?)制作のドキュメンタリもクルマと移動をうまく組み合わせた展開で飽きませんでした。

 

『クラッシュ』は31日、11月1日にも上映されます。ぜひ一度観る価値の映画ではないかと思います。特にかつての自分のようなアラブ世界に関心を持つ学生のみなさま、ぜひご覧になってみてください。